Chie Matsumoto

Chie Matsumoto

Chie Matsumoto is a Japan-based journalist. She worked as a Tokyo correspondent at German Press Agency, dpa, and a reporter for the International Herald Tribune/The Asahi Shimbun.
社会とつながり直す 自分を取り戻す

社会とつながり直す 自分を取り戻す

快晴だがビル風が強く叩きつけた2021年3月14日、幸子さん(30代、仮名)は都内新宿区の大久保公園で実施された「女性による女性のための相談会」に現れた。 新型コロナ感染が拡大する中で、短期契約の仕事も見つからなくなり家賃を2カ月滞納しているという。住宅確保給付金はとりあえず申請したが、所持金は3千円と小銭だけ。話を聞くと、こんな事情があった-。 幸子さんは、中学生の時から細胞に関する研究書などを読み漁り、高校では成績も良く、生物学者を目指して猛勉強した。世界の偉人伝シリーズで魅せられたのは「ファーブル昆虫記」や「シートン動物記」。生物の起源が神秘的だった。 富や名声には全く関心を持たなかったが、知識や情報には貪欲だったという。これには訳がある。幸子さんにとって、本の世界だけが唯一、家にいても安らげる場所だったからだ。 両親からの虐待 幸子さんは親から毎日のように虐待を受けていた。母親からはずっと嫌われていたような気がする。父親は彼女の機嫌をとるために幸子さんを殴るような人だった。腐りかけのご飯を出されたり、食事にゴキブリが乗っていたこともあった。完食するまで半ば軟禁状態で父
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「路上から安定就労へ~女性相談会で私は変わった」

「路上から安定就労へ~女性相談会で私は変わった」

いまも続くコロナ禍はとりわけ女性に厳しい試練をもたらした。一方で、「女性による女性のための」支え合い活動が各地で立ち上っている。そうした危機的状況の中での新たな「出会い」がある女性の暮らしを大きく変えるきっかけにもなっている。 (メグさんの場合・前記事はこちら) 「この数カ月で1年分くらいの『ありがとう』を言っていますよ」 昨年、メグさんは、背筋をのばして少し照れ臭そうに話しはじめた。 関西出身のメグさんは20代でファストフード店の正社員職を見つけ、結婚を前提に交際していた男性もいた。しかし、二人の新居に母親が「同居したい」と言い出したことをきっかけに破談。家を飛び出して水商売に浸かり、デリヘル嬢として生計を立てていた。 病気をしたことで鬱状態になっていたメグさんは、気分を変えるために友人から3万円を借りて上京。遊びで遣ってしまった旅費を取り返したら関西に戻るつもりで、歌舞伎町の路上に立った。東京に来たのは7年ぶり。新規参入の若手が増え、一回の料金が3分の1に激減した。50代になっていたメグさんはさらに収入が減り、関西に戻るこ
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生活保護でも路上生活居所を変え続ける負担も〜中高年女性のいま〜

生活保護でも路上生活居所を変え続ける負担も〜中高年女性のいま〜

「渋谷女性ホームレス殺害事件」から1年 <昨年11月、所持金8円とわずかな身の回りの物を抱えた60代女性が渋谷区幡ヶ谷のバス停で殺された。男(40代)が持っていた袋で彼女の頭を殴りつけたのだ。その場で倒れた彼女の死因は外傷性くも膜下出血。無抵抗な路上生活者に「痛い思いをさせればそこからいなくなると思った」という男の身勝手な「排除」の理由が日本社会に衝撃を与えた。 殺された彼女のような路上生活女性は数多くいる。野宿者など社会的弱者の取材を続けるフリージャーナリスト松元ちえがその実態を追った。> ヒロ子さんの話 2020年11月、新型コロナウイルス感染拡大に伴い出勤や外出自粛が推奨されていた。バス停で殺された60代女性は失職して路上生活に追いやられた。横になれないバス停ベンチでかろうじて休息をとっていた彼女は、男にとって「邪魔」という理由でこの世から排除された。彼女が直前までしていた仕事はデパート地下街の試食アルバイトだったと言われている。 私がコロナ禍で出会ったヒロ子さん(仮名、50代)も路上生活を強いられ、直近にした仕事はデパ地
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ジェンダー平等、女性登用を訴えメディア労組らが会見

ジェンダー平等、女性登用を訴えメディア労組らが会見

This article has not yet been translated into English 新聞や放送、出版といった日本の伝統的メディアは驚くべき男性支配状態である。 そんな実態を踏まえ、新聞と出版、民間放送の労働組合などが各業界団体に対して、女性を役員や意思決定に関わるポストに積極登用するよう要請した。 多様性のある魅力的なコンテンツをつくり、発信するためには意思決定に関与する層の多様化が不可欠で、社会から強く求められている、としている。 新聞労連と出版労連、民放労連のメディアの3労組と「メディアで働く女性ネットワーク」(WiMN)の代表の女性たちが2月9、10日、東京都内の外国特派員協会(FCCJ)などで記者会見して発表した。 4団体によると、在京・在阪放送局の番組制作部門に女性は0人、新聞社の会社法上の役員は10人、記者のうち広義の管理職は22.4%にとどまっている。主要出版社(41社)では全体として女性の従業員比率は放送や新聞より多く、女性の編集長も多くいるが、その上の役員クラスは8.3%程度と
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