日本を刺激するアイスランドの好書

ヨーロッパの一角にあるアイスランドが、どのようにしてジェンダー平等における世界的なリーダーとなったのか、その秘訣を解説する書が日本語に翻訳された。

日本を刺激するアイスランドの好書
2024年、エミレーツ航空文学祭で「ジェンダー格差をなくすには」と題したセッションに登壇するイライザ・リード氏 Credit: Wikimedia

ヨーロッパの一角にあるアイスランドが、どのようにしてジェンダー平等における世界的なリーダーとなったのか、その秘訣を解説する書が日本語に翻訳された。

ジェンダー平等世界一 アイスランドの並外れた女性たち』(2025年)(原著 Secrets of the Sprakkar: Iceland’s Extraordinary Women and How They Are Changing the World、2022年)は、いろいろな人の記憶と国の歴史が混ざり合った好書だ。

著者イライザ・リード氏はライターであり、ライターにとっての祭典「アイスランド・ライターズ・リトリート(IWR)」の共同創設者だ。ジェンダー平等への歩みを明らかにしようと、金融界や政界、農林漁業といった第一次産業、芸術などの各分野で活躍する女性リーダーたちにインタビューを行い、章ごとにまとめた。

各章の間では、アイスランド初期のフェミニストの一人とされる、サガ時代に生きたハルゲルズル・ホシクルズドッティルから、1980年に民主的な選挙で選出された世界初の女性大統領ヴィグディス・フィンボガドッティルに至るまで、過去の傑出した女性たちを紹介し、長きにわたるこの国の伝統も伝えている。

ライターとして、母として、ファーストレディとして

著者自身の物語も語られる。カナダ出身の著者は、英国の大学を卒業後、アイスランドに移住。そこで起業したり、6歳未満の子どもを4人育てる母親になったり、大統領の妻であるファーストレディとなった(2016年〜2024年)。こうしたユニークな体験に裏打ちされた視点がつづられている。

リード氏がアイスランド国内に暮らしながら社会を外から見る視点も持ちあわせるようになったのは、まさに、アイスランドの政策や社会の在り方が大きく寄与している。

秘訣

アイスランドには、子どもが生まれると両親がともに利用できる育児休暇制度があり、男性も女性も取得率が高い。公的医療制度も充実していて、保育政策とそれへの潤沢な補助金もある。

こうした政策が実行されていることで、アイスランドは2022年、家の外で働く女性の割合が世界トップクラスの国の一つとなった。それ以外にも、クオータ制(企業や組織の中で女性の比率を一定程度にするよう求める制度)など種々のジェンダー政策に取り組んでいることで、ジェンダー平等を「重要かどうか」ではなく「どう実現するのが最善か」という観点で議論する社会になった、と著者は記している。

アイスランドのグズニ・ソーラシウス・ヨハンネソン大統領とともに、国賓としてスウェーデンを訪れるイライザ・リード氏 Credit: Wikimedia

「女性の休日」

その結果、人口が増え、経済が成長し、平等を実現するべく人が協力し合う社会に変わった。著者は、自身の社会的階級や肌の色や性的指向において、その特権の恩恵を受けたことを否定していない。しかし、アイスランド社会がやるべき課題はまだ多く、進歩の余地はある。その歩みは既に始まっているのだ。

その結果、人口が増え、経済が成長し、平等を実現するべく、人が協力し合う社会に変わった。著者は、自身の社会的階級や肌の色や性的指向において、その特権の恩恵を受けたことを否定していない。しかし、アイスランド社会がやるべき課題はまだ多く、進歩の余地はある。その歩みは既に始まっているのだ。

著者が本書で紹介した歴史上の偉人や現代の「並外れた女性たち」のように、アイスランドは何を成し遂げることができ、何が可能なのかを示す、ロールモデルのような国だといえる。

日本に必要な一冊

アンフィルターは、本書が日本に必要な一冊だと考え、日本語への翻訳を出版社に提案。翻訳監修を担った。「女性の休日」から50周年を記念する2025年10月24日、邦訳書が出版された。同じ時期、アイスランドに関する邦訳本は他にも数冊出たが、どの本も、アイスランドがジェンダー平等の最先端を走っている理由を探ろうとしている。

日本はジェンダー平等指数ランキングで先進7カ国最下位で、調査対象である148カ国の中では下から数えて31番目に位置する(ジェンダー平等指数ランキング)。世界経済フォーラムはこのランキングを毎年発表している。

そんな日本では、2025年10月24日から2026年3月8日まで、ドキュメンタリー映画「女性の休日」の劇場公開(ドキュメンタリー映画上映)や関連イベントがいくつか企画されている。

3月6日からの1週間は、「女性の休日プロジェクト」として、全国で「#わたしが一日休んだら」というアクションが予定されている。


『ジェンダー平等世界一 アイスランドの並外れた女性たち』 イライザ・リード著、メディア協同組合アンフィルター監訳、明石書店 356ページ 2025年

<アンフィルター協力のイベント>三浦まりさん×塩田潤さん「女性の休日」50年前のアイスランドからのバトン(2026年3月7日18時から)会場参加 1500円 本屋とキッチン「よりまし堂」にてオンライン参加 1100円