アメリカ・ファースト VS 日本人ファースト

アンフィルターでは、当会ジャーナリストであるジョアン・ベイリー、支援者のリッチ・ベイリーとマット・ノイズを交え、ICEによる非正規滞在者や不法移民の摘発について、それぞれが住む地域において、この状況がどのように受け止められているか聞いた。

アメリカ・ファースト VS 日本人ファースト
ニューヨーク市マンハッタンの7番街をデモする「No Kings」の参加者(2025年10月)Rhododendrites

日本政府は5月、外国人政策を発表する。永住権取得要件の強化や、外国人による不動産所有への規制強化が見込まれている。

極右政党である参政党は、「アメリカ・ファースト」を謳って大統領に再選したドナルド・トランプ氏を倣い2025年6月、東京都議会選挙で「日本人ファースト」をスローガンに掲げて第4党に躍進。国内では、移民排斥の動きが高まっている。

一方、アメリカではトランプ政権が不法移民や不法滞在者を一斉に捜索し、特に民主党の首長を置く都市や州へ移民税関執行局(Immigration and Customs Enforcement: ICE)や国境警備隊の職員を派遣した。暴力による強制排除で家族が離散したり、摘発された移民が不衛生で設備が十分でない収容所に拘束されたり市民が殺害されるなど、問題とされてきた。

1月には、アメリカ中西部のミネソタ州ミネアポリスで、3人の子どもを持つレネー・グッドさん(37歳)と、退役軍人病院の看護師であるアレックス・プレッティさん(37歳)が、相次いで銃撃され死亡した。

アンフィルターでは、当会ジャーナリストであるジョアン・ベイリー、支援者のリッチ・ベイリーとマット・ノイズを交え、ICEによる非正規滞在者や不法移民の摘発について、それぞれが住む地域において、この状況がどのように受け止められているか聞いた。

現在3人は、アメリカ中西部にあるウィスコンシン州や西部コロラド州に住んでいるが、日本に在住した経験があることから、日本の外国人政策について連日繰り広げられている抗議行動などについても話し合った。

対談者

リッチ・ベイリー 中国、台湾についてのビジネス報告書などの編集者。ウィスコンシン州を拠点とし、地域コミュニティで政治活動をする。英国、フィジー、カザフスタン、日本での在住経験がある。
ジョアン・ベイリー ウィスコンシン州を拠点とするライター。料理や農業、ファーマーズ・マーケット、旅行などを中心に、Gastro Obscura, The Japan Times, Modern Farmer, Civil Eats, Smithsonian Magazine, Permaculture Magazine に記事を執筆する。日本には14年在住した。
ット・ノイズ 民主的な運動についての教育者でありオルガナイザー。日本に15年在住し、現在はコロラド州コロラドスプリングズを拠点に農業協同組合の活動をする。

アンフィルター 日本初の女性首相となった高市早苗氏は、米トランプ大統領に追随しているように見えます。

リッチ 日本は日本人が多数派ですが、アメリカでは白人が多数派でした。権力層の多くは白人で、その文化や宗教、音楽や食文化が社会では主流でした。その安心感と自信、そして自己満足に浸っていたのだと思います。

しかし、人口構成が変わり、移住者などによって、こうした状況が変わりつつあります。それに対して多くの白人(今も多数派かどうかは不明ですが)は、非常に脅威を感じているわけです。

私たちがいま目にしているのは、白人の覇権を脅かすあらゆるものに対する反発だと感じています。それは人々の考え方や政治に大きく影響しています。

ある意味、日本にも同じような感覚があるんじゃないでしょうか。移民や部外者が、経済や政治を牽引する高齢者層(ここでの権力層ですが)を脅かす存在となる、ということです。 多数派は危惧しますよね。反移民感情が起きやすい環境と言えるでしょう。

日本は特に柔軟性に欠ける国だと感じます。こうした問題に対してなかなか融通が利かない。日本は経済的にも人口学的にも、ある種の転換点に差し掛かっているのかもしれません。こうした恐怖心によって反移民政策が推進されたり、あるいは後押しされることにつながったりしている可能性もあります。

政治家は人びとの注意をそらすために、新たに問題を作り出しているようにも思います。

戦争が近づくとき

マット これは世界的な現象であり世界的な動きであって、なにも新しくありません。

2018年に帰国するまで日本に15年間住んでいました。東京の品川に引っ越して間もなく、ある銀行の窓に「私たちはあなたを監視しています」と書かれた張り紙を見たことを思い出しました。公式の張り紙で、英語、スペイン語、ポルトガル語、中国語、韓国語で書かれていたんです。実に腹立たしかったのを覚えています。20年も前のことですが、考えさせられますよね。

いまのアメリカの国境警備隊は、まさに戦時中の日本にいた特高警察(特別高等警察)のようです。まるで統制が取れておらず、法律や規則に従うつもりもないように見えます。当時、日本では通常の警察の他に、なにも制約されることがない別の警備隊のようなものがいたわけです。日本の警察はすでにやりたい放題ですが、特高警察はそれをはるかに上回るようだったと思います。

このような状況では、何が起こっているのかを把握するのが難しい。ミネアポリスで殺害事件へと発展したことで、国境警備隊がいかに制御不能で、過剰な暴力を振るい、自警団のように振る舞っているかが明らかになりました。

アメリカ政府はこれを警察行為と呼んでいますが、そうではありません。日本の戦時中、特高警察との類似性は、まさに戦争に突入する際に起こることと同じという点で注目すべきことです。

こうした軍事組織の活動によって、人びとの政治への関わり方が大きく変化していることがわかります。

政治的混乱に秩序を取り戻す

ジョアン  トランプ氏が当選したとき日本に住んでいましたが、それでもひどいと思う気持ちは同じでした。本当に恐ろしい結果でしたが、少なくとも私たちは距離を置いていたので、その渦中にいたわけではありませんでした。

昔のように変わり映えのない政治が懐かしい。今の政治は、手当たり次第に何でもやり、何が通用するか試しているようです。その間、アメリカの一般市民は後始末に追われています。本当に疲れる。まるで私たちを疲れさせようとしているようにさえ思います。

今のアメリカ政治は、有害としか言えません。私たちの生活のあらゆる面に浸透しています。本当にひどい。だれもが警戒しているため、見知らぬ人と会話を始める気にもなれません。

共和党は投票を抑圧しようとしています。例えば、アメリカ有権者資格保護法(SAVE America Act)。これは明らかにそうした法案の一つです。身分証の名前と出生証明書の名前が違う場合、別途証明しなければならず、結婚によって姓が変わった女性は、投票できなくなるかもしれないという法律です。こうして政府は私たちの注意をそらそうとしているんです。

ウィスコンシン州ポーテージで毎週金曜日に声をあげるリッチ・ベイリーさんと地域住民
ミネソタ州でICEと国境警備隊が移民の取り締まりを強化しています。

リッチ 私はウィスコンシン州の小さな町で「インディビジブル(Indivisible)」というグループを立ち上げ、金曜日には抗議活動を組織しています。2016年にトランプ氏が大統領に就任した際、失職した議会職員たちが結成した全米ネットワークです。国民が怒りを抱いていたため、「インディビジブル」のガイドブックを作成しました。このガイドブックには、変化を起こしたいときにどうすればよいか書かれています。

このガイドブックは広く共有され、ネットワークは今や世界的に広がり、その大半はアメリカ国内に拠点を置いています。

マット  数カ月前にコロラドスプリングズで開催した「ノー・キングス・デー(No Kings Day)」には、本当にたくさんの人が集まりました。いつもの顔ぶれとは全く違う人たちが集まったのは興味深いところです。いつもの抗議活動より政治的に多様な人が集まっていました。

例えば、元軍人がたくさん参加していました。ある人は「私たちが戦わなくて済むように祖父はファシストと戦ったんだ」と書かれたプラカードを掲げていました。また、別の人は「私のような中年の白人男性がプラカードを掲げているということは、何か悪いことが起きている証拠だ」と書いたプラカードを持っていました。このように、手作りで独創的なプラカードをたくさん見かけました。

この辺りでは、アメリカ国旗を掲げた大型ピックアップトラックをよく見かけます。普段はトランプ支持者だと思っているのですが、ほとんどのトラックが私たちのデモを支持するためにクラクションを鳴らしてくれました。

「No Kings」のデモは、ワシントン州エバレット中心街にも広がった。(2025年6月) Credit: SounderBruce.
「看護師は命を救う、ICEは命を奪う」

アレックス・プレッティさんが殺害された直後、およそ300人が抗議活動に集まりました。草の根から自然発生したデモでした。雰囲気は、従来の定型的な抗議活動とは全く違いました。

路上では私の隣に看護師が2人いました。あまりにも感情が高ぶっていたので、彼女たちに話しかけようとしたのですが、胸がいっぱいで思うように言葉が出ませんでした。ようやく彼女たちと話すことができ、病院ではプレッティ殺害事件が話題になっていると聞きました。プレッティさんに強く共感していたからです。彼女たちのプラカードには「看護師は命を救う、ICEは命を奪う」と書かれていました。

本当に素晴らしいデモでした。コロラドスプリングズのような町では、デモの成功は通り過ぎる車のクラクションで判断されるのですが、多くの車がクラクションを鳴らしてくれました。

リッチ ミネソタ州セントポールでは、近隣住民による小規模でも自然発生的な抗議活動が頻繁に行われています。市民が交差点に家具やゴミ箱を使って交通バリケードを築き、交通の流れを遅らせてICEを識別しやすいようにしている映像を見ました。

ツインシティーズと呼ばれるミネアポリスとセントポールでは、ジョージ・フロイド氏とミネソタ州の政治家メリッサ・ホートマン氏とその夫の殺害事件をきっかけに、こうした抗議活動を行うようになったのです。

ホートマン氏とその夫が殺害された時、私たちはツインシティーズにいました。非常に恐ろしい事件でしたが、非常に印象的だったことを覚えています。市民は即座に、それぞれの地域や交差点に出てプラカードを掲げていました。市内各地で抗議活動を行っているのを見て、ツインシティーズには人を集めて抗議活動を行うための歴史と社会的な基盤があると感じました。

恐怖の中で生活する移住者

ミネソタ州の人は、トランプ政権がミネアポリスのソマリア系住民を標的にしていることに憤慨しています。ソマリア人のコミュニティは、歴史があり、地域にとっても重要な存在と考えられ、愛されています。地域住民は皆、トランプ氏とスティーブン・ミラー氏が彼らを悪者に仕立て上げようとしていることに腹を立てています。

マット コロラドスプリングズでもICEの活動はありますが、ミネアポリスや他の地域ほどではありません。私の友人は6歳の頃からここに住んでいるのですが、彼女とその家族は不法滞在者です。彼女の兄は数カ月前に車を止められ、拘束されました。車は路肩に放置されたままでした。今、彼は強制送還されそうな状態だと聞いています。彼には二人の幼い子どもがいて、問題を多く抱える別居中の妻が子どもたちの世話をしています。まさに悲惨な状況です。

私の友人は移民問題に非常に詳しく、ドメスティック・バイオレンスの被害に遭った移民女性の支援活動をしています。デンバーの団体や弁護士の協力を得ても、兄を助けるためにあらゆる手を尽くしたようですが、無駄でした。以前は問題なく生活を続けることができたかもしれませんが、今はどんな方法でも救いようがありません。常に恐怖の中で暮らしています。

自分たちの土地から追われる先住民族

ジョアン ミネソタ州では先住民族の存在感が非常に強く、この土地は先住民族の土地であるという認識が今もなお根強くあります。かつてそこに住んでいた人たち、そして今もそこに暮らしている人たちがいるとの意識があるんです。

町中にそういった場所が点在しているだけでなく、長老のショーン・シャーマンの存在も大きいのではと思います。彼は先住民族の権利擁護と食文化の復興において重要な役割を担っています。彼はヒーローのような存在ですが、彼の従業員のうち少なくとも2、3人は先住民であるにもかかわらず、ICEに連行されてしまいました。この件では、明らかに強い緊張が走ったと思います。

先住民族が連行されるというのは明らかに許しがたいことですが、これは私たちが長い間、彼らの存在を尊重してこなかったことも関係しています。

ミネソタ州はきちんと歴史を記録するために、少しずつでも着実に歩みを進めているように感じます。過去の出来事を完全に償うことはできませんが、ミネソタ州は不完全ながらも、解決策を見つけようと努力していると思います。

平等でなければならないかどうかではなく、どうすれば平等な社会が実現できるかが重要なのです。ミネソタ州の市民はそうした初歩的な議論をはるかに超えており、どうしたら団結できるかを探っているんです。

なによりも、トランプ政権からの攻撃はミネソタ州のティム・ウォルツ知事への報復行為に違いありません。

リッチ もしこれが本当に移民問題だとしたら、不法滞在者が比較的多くいるテキサス州など他にも対象となる地域はたくさんあるはずです。MAGA(Make America Great Again)支持者や共和党はリベラル派を挑発して諦めさせようとしているのです。彼らはリベラル派を支配したいのです。

移民問題はアメリカにおける大きな政治問題であり、トランプの強みの一つとされていましたが、実際はそうではありませんでした。

注意を逸らすため

ジョアン でもそれは、ジェフリー・エプスタイン事件の重要ファイルや経済、関税問題から注意を逸らす格好のネタです。

ミネソタ州には他にも、例えば国立公園であるバウンダリー・ウォーターズで鉱山開発を始めるといった重要な法案があります。これが決行されてしまうと、世界最大級の淡水源である五大湖の水質に深刻な影響が出る。あらゆる人々の生活が脅かされるだろうし、特に先住民族にも影響します。

政府はエプスタイン事件のファイルの一部を公開して、ミネソタ州で起きていることから市民の注意を逸らそうとしているんです。結局、その魂胆は裏目に出たようです。

リッチ でも、これはすべてリベラル派を陥れるため、気に入らない人や意見の合わない人を負かすためにやっています。でも、トランプ政権はかなり前からこういうことをやってきた。だから、ICEが突然変わったわけではないです。

マット 私の家から約2~3キロ離れた所では、また別の事件が起こりました。私が住む地域は移民が集中している典型的な街ではありません。

若い白人女性が、ナンバープレートのない2台のSUVに挟まれ、車を止められました。彼女は、こうした状況における自分の権利と警察の適切な手続きを理解していたので、車から降ろされそうになっても窓を開けることを拒否し、警察に通報したのです。すると警察が到着する前に、ICEは立ち去ったと言います。ICEが乗る車には何も書いてないので、車を止められても相手が誰なのか分かりません。マスクを着用しており、警察の適切な手続きにも従いません。まるで1980年代の中米の民兵組織です。非常によく似ています。これは異常です。

ルールに従うか、そうでないか

レネー・グッドさんが殺害されたときの映像では、捜査官がドアをつかんで彼女に車から降りるよう怒鳴りつけています。これは警察の標準的な手順とは全く違います。異例とも言える行為です。

警察は手順を踏みます。最初は、丁重な態度で接してきます。相手が暴力的に反応しないようにするためです。そして州警察であるなど身分を明かし、車を止めるよう言った理由を伝えます。その後、いろいろと聞いてきますが、それさえも決められた手順に従います。一連の質問をすることで、相手と明確かつ敬意のある関係を築こうとするんです。警察は、根拠もないのに、ドライバーに車から降りるよう要求することはできません。できるのは、免許証と車両登録証の提示を求めることだけです。

最近では、Flockと呼ばれる監視技術が使われているようです。これは、車のナンバープレートを読み取り、登録情報と照合する検出システムです。このような監視サイトは街中、何十箇所にも設置されています。

国境警備隊は、特にカナダとメキシコとの国境の警備が担当で、そこでの取り締まりを行う訓練を受けています。国境警備ははるかに荒々しく、暴力的でもあります。アメリカ国民を相手にしているわけではないので、州警察と同じ手順に従わないだけか、憲法上の権利を尊重しない。はるかに攻撃的なんです。

アレックス・プレッティさんは国境警備隊員によって殺害されたんです。ICEもひどいですが、国境警備隊はそれ以上です。

ジョアン ミネソタ州で興味深いのは、インフルエンサーを含め、多くの人が状況を撮影しはじめたことです。まるで市民ジャーナリストのように。リスクを承知の上で、自分たちがやらなければ誰もやらないと考えているんです。私はその姿勢を本当に尊敬しているし、それは自分自身を守る方法でもあると思います。

(後半は4月21日公開予定)