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ウクライナ紛争を伝える喉と舌  マス・コミの戦争報道技術力を評価する

ウクライナ紛争を伝える喉と舌  マス・コミの戦争報道技術力を評価する

はじめに 2022年2月24日に始まった、ロシアのウクライナ侵攻についてのマス・コミ報道をアンフィルターとしての目線で批判・検証したい。本稿は、デイビッド・マックニール記者から示された、日本のテレビ報道が現地取材を避けている状況を検討した論考を踏まえ、そこで示されなかった領域にも焦点を当て、ウクライナ侵攻についての報道の問題をさらに深く議論する材料としたい。 ウクライナ侵攻に関する歴史的背景 現在のウクライナ紛争を読み解く前提として、歴史的な背景を把握しておく必要があるだろう。しかし、多くの日本人にとって旧東欧諸国の一つにすぎないウクライナの歴史などはほとんど関心がなかったのが実態であるはずだ。加えて言えば、アメリカの政治学者イアン・ブレマーがNHK教育テレビETV特集(『ウクライナ侵攻が変える世界』※Unfiltered 注)のインタビューで答えていたが、ソ連崩壊以降の30年間、西側全体がこの地域に無関心だった。そのような西側目線からみると、なぜ、プーチンのロシアがウクライナに固執している(ようにみえる)のか理解し難いだろう。これには第2次世界大戦の独ソ戦から見直す必要がある。
OATES.
戦火の列から遠ざかる日本メディア なぜウクライナからの報道を避けるのか

戦火の列から遠ざかる日本メディア なぜウクライナからの報道を避けるのか

2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以来、日本のメディアは他国と同様に、後れを取らないよう必死に報道している。しかし各国と違うのは、ウクライナの首都キーウ(旧キエフ)やその他主要都市から取材する日本のテレビ局や新聞社の記者が少ないことだ。日本のテレビで現地からレポートするのはフリーランス記者であり、安全な日本のスタジオから8000キロ先で起こっている戦争を分析する専門家の姿ばかりが放映されている。これに対して、AFP通信東京特派員のカリン西村記者が、官邸記者会見で岸田文雄首相に理由を尋ねた。 岸田首相は次のように回答した。「ウクライナは危険な状況であり、日本は目的の如何を問わず、同国への渡航をやめていただきたいとお願いしています。ウクライナにおいては、皆さんもよくご存知のように、いまなお激しい戦闘が各地で続いています。命の危険があります。こうした緊迫した状況でありますので、政府の取り組みについてもぜひご理解とご協力をお願いしたいというのが、この問題に対する政府からの考え方ということですので、ぜひご理解をいただきたいと思います」 このやり取りを聞いて既視感を覚えた人もいるかもしれな
David McNeill
【食品安全問題再考 対談】 私たちにとって必要なパンとは

【食品安全問題再考 対談】 私たちにとって必要なパンとは

ウクライナ・ロシア紛争の勃発は世界に大きな衝撃を与えている。ヨーロッパのパン籠で再び起きた紛争は今後、世界的な食糧危機を引き起こす可能性があるだろう。アンフィルターは、「食品」や「食文化」に焦点をあてて、どのような課題が潜んでいるのか検証を試みる。 対談第一回目では、食品問題に関わってきた目線で対談者の関心や、バックグラウンドなどを紹介しつつ語ってもらった。 【対談者】 オーツは、日本国内への遺伝子組み換え農作物の規制策定時から現在まで、食品安全問題や、食品添加物の市場動向に関する取材に携わってきた。     ジョアン・ベイリーは、食物、農業、ファーマーズ・マーケットなどの話題を取材するジャーナリストであると同時に、食と文化の交差性について教鞭をとる。 ベイリー テンプル大学ジャパンキャンパスで食文化についての講義を持っている。学生が様々な話題を通して自分たちの食文化を探求する授業だ。地質学から気候、人種差別に土着の食物、抵抗や革命などにおける食の意味など、多くのことを検証し議論する。 食物は、伝統や土地、政治や経済などあらゆることに深いつながりを持
Joan Bailey, OATES.
日本の武器輸出の現状 パソコンやゲームは海外で軍事転用 現地で組み立てれば「合法」? 輸出に舵切った安倍

日本の武器輸出の現状 パソコンやゲームは海外で軍事転用 現地で組み立てれば「合法」? 輸出に舵切った安倍

This article has not yet been translated into English. 2021年の衆院選では「敵基地攻撃能力の保有」が争点の一つになったものの、武器輸出の議論は低調だ。その間に沖縄ではミサイル配備が進む。アンフィルターは武器取引反対ネットワーク(NAJAT)代表の杉原浩司さんに現状と課題を聞いた。前半と後半に分けて掲載する。 杉原浩司 日本で使われているもの(民生品)が海外で軍事転用されていることを紹介したい。例にあげると、1970年代のベトナム戦争でソニー製のテレビカメラ部品が米軍の誘導ミサイルに使われていた。京セラのセラミック部品は米軍のトマホークミサイルなどの先端部分に使われている。パナソニックのノートパソコン「タフブック」は、その頑丈さゆえに米国警察が買い、銃弾が当たっても壊れないと評判になって米陸軍も購入、中東での戦争で砂嵐という条件下でも使えると重宝されている。 まだある。ソニーのプレイステーション(以下プレステ)を米空軍が大量購入し、高性能のレーダー開発などに応用したのではないかと見ら
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高くつく再生エネ、どうすれば 「まだ見ぬ技術で解決」は空論 労組も「気候正義」や政策提唱を 水素はカーボンニュートラルといえるか

高くつく再生エネ、どうすれば 「まだ見ぬ技術で解決」は空論 労組も「気候正義」や政策提唱を 水素はカーボンニュートラルといえるか

第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26。10月31日開幕、11月13日閉幕)は成果文書「グラスゴー気候合意」を採択したが、形骸化した国際会議という感は否めない。気候変動問題のポイントは何なのか。アンフィルターに執筆し、日ごろこの問題を日本で取材する日比野敏陽記者と大津昭浩記者に対談してもらった。前半より続く。 日比野敏陽 水素自動車の話を展開すると、それは果たしてカーボンニュートラルなのかという疑問を呈したい。水素は豪州など海外から天然ガスをタンカーなどで輸入しなければつくれない。加工して水素にするわけだ。水素生成のためどこからエネルギーを持ってくるのか、最終的にできたものはカーボンニュートラルかもしれないが、工程が非効率ではないかと問いたい。 COPの問題点 大津昭浩 カーボンニュートラルを謳うのがCOPだ。この主張の根拠はコンピューターシミュレーションに基づく予測だが、COPが取り上げている問題と、COPそのものがはらむ問題の2つを分けて考えたい。 2009年のCOP15では、米国のオバマ大統領と中国の温家宝首相が会談し、主導権が中国に移った。以後、COPの温
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COP閉幕後も課題山積 変わる社会構造、迫られる産業界 電気自動車主流の中で日本は

COP閉幕後も課題山積 変わる社会構造、迫られる産業界 電気自動車主流の中で日本は

第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26。10月31日開幕、11月13日閉幕)は成果文書「グラスゴー気候合意」を採択したが、形骸化した国際会議という感は否めない。気候変動問題のポイントは何なのか。アンフィルターに執筆し、日ごろこの問題を日本で取材する日比野敏陽記者と大津昭浩記者に対談してもらった。前半と後半に分けて掲載する。 カーボンニュートラルの意味 日比野敏陽 カーボンニュートラルとは、二酸化炭素(CO2)をはじめ人間の活動で発生する温室効果ガスと、植物が光合成で吸収する量などを相殺してプラスマイナスゼロとなる状態のことをいう。方法としては、化石燃料から再生可能エネルギー(再生エネ)や水素などへの転換、森林を再生させてCO2を吸収する植物を新たに育てる「カーボンオフセット」などがある。これを世界的に進める政策が求められている。 日本も取り組まなければ 日本も取り組まなければならない理由は2つある。第1に、英国や仏に遅れて産業革命が始まったとはいえ、先進国として大量の化石燃料を使ってきた歴史的責任がある。第2に、化石燃料を多く使っている中国やインドと比べても日本の
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